2009/06/26

国際結婚して海外で子を出産した方はご用心

次のような報道があった。

国籍再取得に向け訪日 日比の親持つ子供ら

結婚した日本人男性とフィリピン人女性との間に生まれ、出生時に日本国籍を持ちながら、フィリピンに残され、手続きの問題で日本国籍を喪失した子供5人が25日、国籍再取得のため母とともにマニラから訪日した。子供たちは京都府内の学校に通いながら国籍再取得を申請、母は身元引受先の介護施設で働き、養育を続ける。

問題の背景は次の点にある。

結婚した日本人と外国人の子供は、出生と同時に日本国籍を取得。ただし、外国で生まれ、日本国籍と同時に外国籍も取得した場合、出生から3カ月以内に日本国籍留保の届け出を現地大使館などにしなければ、日本国籍を喪失する。

この国籍留保の届出は出生の届出と同時にしなければならないとされている(戸籍法104条2項)。つまり、出生届のときに国籍留保の届出をしなかった場合は、最初から日本国籍を持たなかったことになってしまう。

これに関し、実務上は次のように考えられているようだ。

戸籍法は国籍留保届を特別に設けておらず、出生届の「その他」の欄に「日本国籍を留保する」旨記載することによって行われている。国籍留保の意思表示をしなければ日本国籍を喪失するこの出生届は、国籍留保の意思表示の届出とともにしなければ、受理すべきではないと解されている。国籍留保の意志が明示されていない出生届を誤って受理した場合には、通常は国籍留保の意志があると解されているので、出生届が期間内になされている限り、その後に国籍留保の追完的届出があれば有効として扱われている(昭和35年6月20日民事甲第1495号民事局回答)。

木棚照一『逐条註解国籍法』(日本加除出版、2003年)
(太字は引用者)

報道の事例で役所(領事館)の係の対応がどうだったのかは分からないが、気の効いた対応がなされていればこの問題は防げた可能性がある。いずれにしろ、国際結婚して海外で子を出産した人は、子の国籍の問題を気にかけておく方がよい。