2007/01/30

在留資格認定証明書不交付決定取消の顛末 - その1

いったん不交付の決定がなされた在留資格認定証明書交付申請が1ヶ月半後に取り消され、遡って交付となった。その顛末を備忘録代わりに書いておきたい。

申請人は中国の会社員で、日本のソフトウェア会社からシステムエンジニア・プログラマとして採用の内定をもらった。この会社からの依頼により「技術」の在留資格認定証明書交付申請を申請取次したわけである。

在留資格「技術」が認められるために重要な条件が2つある。

  1. 大卒の学歴または10年以上の実務経験があること(大学は短大でも可)。
  2. 学校または実務経験によって履修した技術・知識が、就職先で従事しようとする業務に必要であること。

ただし情報処理技術者については例外規定がある。一定の情報処理技術に関する試験合格者または有資格者は、上記2つに該当していなくても構わないのだ。この試験・資格を定めているのが通称「IT告示」である。

「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術及び特定活動の在留資格に係る基準の特例を定める件」通称「IT告示」

このIT告示の第6号に中国の試験がある。

六 中国信息産業部電子教育中心が実施する試験のうち次に掲げるもの
 イ 系統分析員(システム・アナリスト)
 ロ 高級程序員(ソフトウエア・エンジニア)
 ハ 程序員(プログラマ)

今回の申請人はこの「程序員」の試験に合格していた。


この申請人がIT告示に該当することは明らかだと思われたが、念のため事前に入管へ確認することにした。すると、この資格証書を見た職員は、確かに程序員だが「資格級別」に「初級」とあるのでIT告示には該当しなかったように思う、確かめてみないとはっりきしたことは言えないが、という意味の返答をした。

「程序員」であっても該当しない場合があるとはIT告示のどこにも書かれていないのに、入管職員はなぜそのようなことを言うのか。調べてみると思い当たる点が見つかった。

在留資格認定証明書不交付決定取消の顛末 - その2へ続く)


2007/01/27

偽装請負に対する取組 厚生労働省

偽装請負に対する当面の取組について

2006年9月4日付けで労働基準局長・職業安全局長から都道府県労働局長あてに発せられた通達。


IT分野の請負適正化のための自主点検表 東京労働局

情報サービス業に於ける請負の適正化のための自主点検表

派遣と請負により行われる事業の区分基準(昭和61年労働省告示第37号)及び職業安定法施行規則第4条を踏まえて、請負(業務委託を含む)が適正に行われているかのチェックポイント(目安)を示したものです。適正な請負のための大切な要件は「★印」の2つの項目です。それを満たすためにさらに「1~4」の4つの項目があります。現場の実態に照らし合わせて点検をしてみましょう!

(対象業務:ソフトウェア・システム設計・開発、システム運用管理等)


電子モールの独占禁止法的問題 - 公取委の報告書

公正取引委員会の報道発表資料「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」(PDF)より。

  • 電子商店街における取引は運営事業者のうち上位3社に集中
  • 上位3社の中には出店事業者との取引において優位に立つ場合がある事業者がある。

概要

  • 取引規模(=電子商店街内で流通する商品等の総額)から見ると,楽天,ヤフー,DeNAの3社が上位の運営事業者であり(以下「上位3社」という。),上位3社だけで電子商店街全体の市場規模の9割超を占める。

  • 上位3社と出店事業者の事業規模には格差があり,また,上位3社に取引が 集中している状況にあるところ,出店事業者は一般的に電子商店街における 取引への依存度が高く,取引先である運営事業者を変更することが困難な場合があり,上位3社の中には,出店事業者に対する取引上の立場において優位に立つ場合がある事業者がある。

具体的には以下のような点が独占禁止法上問題となりうると指摘されている。

  • 退店後のダイレクトメール送付等の営業活動の制限は運営事業者による拘束条件付取引となりうる。

  • 手数料率の一方的変更は優越的地位の濫用等につながるおそれがある。

  • 過大なポイント原資の賦課は優越的地位の濫用等につながるおそれがある。

  • 運営事業者によるカード決済代行業務の利用義務付けは優越的地位の濫用等につながるおそれがある。

  • 定価販売の遵守や値引販売の禁止は再販売価格の拘束となりうる。

  • 仕入先事業者によるネット販売の禁止や高い仕入値の設定は拘束条件付取引や差別対価となりうる。

公取委下請取引改善協力委員会議で出た情報サービス分野に関する意見

公正取引委員会の報道発表資料「下請取引改善協力委員会議で出された主な意見について」(PDF)より。

 公正取引委員会では,下請法の的確な運用に資するため,昭和40年度以降,各地域の下請取引の実情に明るい民間有識者等に下請取引改善協力委員を委嘱している。平成18年度における下請取引改善協力委員は153名である。

 今般,平成18年11月1日から11月30日の間,地域ブロックごとに下請取引改善協力委員会議を開催した(開催状況は別紙のとおり。)。同会議において,各地域の下請取引改善協力委員から下請取引の現状等に関して出された主な意見等の概要は以下のとおりである。

IT分野等に関する意見は以下のとおり。

  • 情報成果物の作成委託では,物品の製造のように客観的な数値等で発注内容を判断することができず,人間の主観的な部分で判断しなければならない要素が多いため,完成した成果物の受領を巡って親事業者と下請事業者の間でトラブルとなりやすい。

  • 情報成果物作成委託分野は,発注内容を主観的に判断せざるを得ない場合があるため,書面交付の徹底とともに,知的財産権の帰属等も含めて,発注内容の明確化を図るよう指導することが重要である。

  • 情報サービス分野では,コーディング作業を受注した下請事業者が,親事業者の社内で作業することが多く,請負と人材派遣の区別が困難な場合があるため,親事業者は下請法及び労働者派遣法に関する理解を深める必要がある。

「情報成果物の作成委託では,物品の製造のように客観的な数値等で発注内容を判断することができず,人間の主観的な部分で判断しなければならない要素が多い」という点については、確かにそのような現実があると思う。しかし、だからこそ可能な限り指標を数値化(見える化?)する必要性があるのではないだろうか。

業種を問わない全般的な意見は以下のとおり。

  • 景気の回復が戦後最長を記録したといわれているが,それは大企業を中心としたものである。中小企業が多い下請事業者は,依然として親事業者からの厳しいコスト削減要求を受けており,景気回復の実感は少ない。

  • 大企業を中心とした景気回復の影響で,一部の下請事業者への発注は活発に行われている。しかし,下請事業者の受注量が増えたとしても,コストが増 加しているにもかかわらず下請代金は据え置かれているため,利益は思ったほど出ておらず,下請事業者の多くは「利益なき繁忙」といった状況になっている。

  • 違反事件の勧告・公表措置の効果はかなり大きい。違反事実を公表されることは,企業のイメージ低下につながるため,親事業者は下請法遵守を積極的に行っているように思われる。

  • 大企業の下請法認知度は高まっているが,中小企業の下請法に関する認識は依然低いことから,今後の下請法の普及・啓発は中小企業に対しても広く行っていく必要がある。

  • 親事業者の法務担当者は下請法を熟知しているが,現場の発注担当者の下請法に関する理解度はまだまだ不足している。講習会の機会を増やしたりするなど,積極的な普及・啓発活動が重要である。

  • 親事業者に対する書面調査は,違反事件の探知のために行っていると思うが,下請法の普及・啓発の手段としても有効なのではないか。

  • 下請事業者の中には,公正取引委員会から送られてくる書面調査に記入した情報が何らかの形で漏れることを警戒するあまり,事実を回答せずに当たり 障りのない回答をしている者もいるのではないか。違反か違反でないかだけを判定するのではなく,下請事業者が取引上困っているとのサインを出しやすくする ような工夫が必要である。

  • 親事業者に対する調査は,書面のみで行うよりもできる限り直接出向いて行う方が効果的ではないか。


「電子商取引等に関する準則改訂案」に対する意見公募

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595206035&OBJCD=&GROUP

意見・情報受付開始日:2006年12月25日

意見・情報受付締切日:2007年1月25日

メールは証拠になるか

電子メールは裁判で証拠になるかについて、南山大学町村泰貴教授がITmediaで解説している。

http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0612/22/news006.html

概略は次のようになる。

  • PCメール・携帯メールも証拠となりうる。
  • 当事者間でメールの真偽性に争いがなければ証拠として扱われる。
  • 真偽性に争いがある場合でも電子署名がなされていれば本物と推定される。
  • 電子署名がない場合はデータに含まれるさまざまな情報から判断する。

「さまざまな情報から判断する」作業がデジタル・フォレンジックということになろうか。


特許庁へのオンライン申請で使える電子証明書

特許・商標等を特許庁へオンライン申請する際に使える電子証明書は以下の認証局から発行されたものとされている。

法人の場合

  • 電子認証登記所(商業登記認証局)

個人事業主(弁理士含む)の場合

  • 日本商工会議所 ビジネス認証サービスタイプ1に係る認証局(一般行政手続用電子証明書(タイプ1-E)に限る)
個人(弁理士含む)の場合
  • 日本認証サービス株式会社 AccreditedSignパブリックサービス2に係る認証局
  • セコムトラストシステムズ株式会社 セコムパスポートfor G-IDに係る認証局
  • (株)中電シーティーアイ CTI電子入札・申請届出対応電子認証サービスに係る認証局

インターネット出願ソフトで利用可能な電子証明書について

公的個人認証サービスの電子証明書がなぜ使えないのか?


2007/01/26

総務省が個人情報漏洩でNTTドコモに厳重注意

個人情報の漏えい事案に関する株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモに対する措置(総務省報道資料)

2006年9月に起った3万8483件の個人情報漏洩に関して総務省が文書による厳重注意を行った。

事件の概要は、NTTドコモの業務委託先の社員が事務所移転準備作業中に事務所備品購入のためショッピングセンターの駐車場に車を駐車していたところ、車から離れている間に車上あらしに遭い、個人情報を記録したUSBフラッシュメモリーの入ったバッグが盗難に遭い、個人情報(氏名・携帯電話番号)3万8483件が漏洩したというものである。


NTTドコモが総務省に提出した報告によると発生原因は次の3点が挙げられている。
  1. 委託先従業員による個人情報の無許可複製
  2. 委託先従業員の不十分な意識
  3. 指導監督の不徹底
そして主な再発防止策としては次の3点が挙げられている。
  1. 個人情報管理状態の点検
  2. 教育研修
  3. 抜き打ち調査
この再発防止策で本当に再発が防げるのだろうか。例えば、業務委託時に個人情報の取扱に関する契約を交しておき、被害発生時には損害を賠償してもらうことを明記するなどの方法は考えられないだろうか。


京都銀行ダイレクトバンキングで電子証明書期限切れ

京都銀行ダイレクトバンキングにログインしようとしたらこのような画面が表示された(Firefox 2.0.0.1)。



電子証明書の有効期限切れである。IE7 でアクセスすると次のようになった。


「セキュリティ証明書の問題によって、詐欺や、お使いのコンピュータからサーバに送信される情報を盗み取る意図が示唆されている場合があります。」や「このページを閉じて、このWebサイトの閲覧を続行しないことを推奨します。」とあり、非常に強い表現で警告されている。

詳細についてヘルプを参照すると以下のように解説されていた。

このエラーは、現在の日付が証明書の有効期間より前または後のときに発生します。Web サイトは、証明書を最新の状態にするために、証明機関で証明書を更新する必要があります。有効期限の切れた証明書は、セキュリティの問題を発生させる可能性があります。証明書を発行した証明機関は、証明書の有効期限が切れた後は、証明書が不正に使用されないことを保証していません。

かなり安全性を意識した作りになっており、妥当なことだと思う。問題なのはサービス提供者側(今回の場合は京都銀行)の意識だ。


問い合わせ先の京都銀行ダイレクトバンキングセンターに電話して聞いてみると、今朝から障害が発生しておりお客様には迷惑をかけているが、セキュリティ面の問題はないので「はい」を押して先へ進んでくれとの回答である。

Firefox2 でも IE7 でも「はい」というボタンは出てこないのでこの回答には少々戸惑ったが、要は警告を無視して先へ進めという意味であろう。それにしてもこの回答はひどい。前掲の IE7の画面を見ると警告を無視してよいとは到底思えないが、これに対して「セキュリティ面の問題はありませんので」と言い切ってしまって良いものだろうか。

食い下がって詳しい回答を求めようとしたが、「セキュリティ面の問題はありませんので」を何度も繰り返す若い(と思われる)女性がかわいそうになり、止めてしまった。そのように答えろと上司から言われているのだろうが、もう少し何とかならないものか。

参考:

高木浩光@自宅の日記 - 広島市曰く「警告は出ますがセキュリティ自体には問題ない」, 高知県情報企画課曰く「とくにおかしいと思わない」, 簡単な結論