2007/11/18

内容証明の法的効力


内容証明について再確認したのでメモ。

書面を内容証明にすることで得られる法的効力は確定日付があるものとされるということ。それ以外には特にない(あるという方は是非教えてください)。


民法施行法

第四条 証書ハ確定日附アルニ非サレハ第三者ニ対シ其作成ノ日ニ付キ完全ナル証拠力ヲ有セス

第五条 証書ハ左ノ場合ニ限リ確定日付アルモノトス

一~五 (略)
六 郵便認証司(郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第五十九条第一項ニ規定スル郵便認証司ヲ謂フ)ガ同法第五十八条第一号ニ規定スル内容証明ノ取扱ニ係ル認証ヲ為シタルトキハ同号ノ規定ニ従ヒテ記載シタル日付ヲ以テ確定日付トス

2~3 (略)

2007/02/28

労働組合と個人情報保護法

日本航空の労働組合「JAL労働組合」が、社員である客室乗務員約7000人分の個人情報を本人に無断で保有していたとの報道があった。
JAL労組、7千人の情報無断保有…思想や容姿評価も

読売新聞より。

この問題について、冬柴国土交通相は27日の閣議後記者会見で、
「とんでもない話で、個人情報保護法上の問題があるかどうかを調査したい」と述べた。
はて労働組合のような団体にも個人情報保護法の適用があるのだろうかとフと思い、
調べてみた。


個人情報保護法での法規制の対象は「個人情報取扱事業者」として定義されている。

個人情報保護法第2条

3 この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一 国の機関
二 地方公共団体
三 独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律 (平成15年法律第59号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)
四 地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)
五  その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者

(太字は引用者)
労働組合は「事業」を行う団体にあたるのだろうかと思いつつ、岡村久道『個人情報保護法』(商事法務、2004年)をひもといてみると、次のように解説されていた。


次に、大量の個人情報データベース等を取り扱うことによる個人の権利利益侵害のおそれは、営利目的の事業か否かで本質的な違いがないことを理由に、非営利のNPO等も「個人情報取扱事業者」に該当しうると解されている(略)。一般に「事業」とは「なんらかの経済的利益の供給に対応して反対給付を受ける経済活動」をいうものと解されている(略)。したがって、本文の解釈は一般的な「事業」概念と異なる解釈が採用されていることになろう。
これによると「個人情報保護法上の問題がある」ということになりそうだ。

2007/02/22

ELECOM MS-STM95(ノートパソコン用マイク)が来た

注文していたELECOM ノートパソコン用マイクロフォン MS-STM95が到着した。

死んでしまった Thinkpad X31 に代わって昨年の夏からLet's note CF-R5 を使っているが、CF-R5 にはマイク用端子が付いているだけでマイクは内蔵されていない。これからは Google トークや Skype をもっと活用したいと思っており、始めはヘッドセットを探していたのだが、偶然この商品を知り、注文したのだった。よく考えればスピーカーは付いているので、マイク機能だけを追加すれば足りるのだ。


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非常に小さなサイズで、ノートパソコンと一緒に持ち運んでも苦にならずに済みそうだ。出先で Google トークや Skype ができることを想像すると少し楽しくなる。

早速試しに自分あてに Google トークのボイスメールを送ってみたところ、音質はまったく問題なく、とてもクリアに聞こえた。マイクの位置からしてキーボードの打鍵音を拾ってしまうのは止むをえないが、特に気にするほどでもない。


Posted by Picasa


上は CF-R5 のマイク用端子に差し込んだところ。左手の邪魔にならないよう右に傾けている。


2007/02/17

Winny判決を考えるシンポジウムに行ってきた

情報処理技術と刑事事件に関する共同シンポジウム「IT技術と刑事事件を考える-Winny事件判決を契機として-」に行ってきた。以下、感想や新たに得られた知見などを書く。


  • 立命館大学法科大学院の指宿信教授による幇助犯の刑事法的解説は素晴しくわかりやすかった。岡村久道弁護士による本件判決の解説も、刑法上の幇助犯と著作権法違反との関連を理解するうえで大変勉強になった。
  • 本件は直接には著作権法の問題ではなく刑法の問題であることを今さらながら理解した。
  • ものすごく大雑把に言うと、幇助の意思(認識+認容)・幇助の行為(正犯の容易化)という幇助犯成立の要件からすれば有罪は止むを得ないとも考えられるが、認識+認容の程度の判断基準が必ずしも明確ではないなどの問題が先送りされたというところか。
  • 産業技術総合研究所の高木浩光主任研究員が、その日記で、Winnyネットワークの抱える問題点を指摘していることは知っていたが、今日の氏の講演でその具体的理解が進んだ。
  • 大阪弁護士会館は恐ろしく立派な建物であった。

2007/02/15

IT業界と下請法 - その3

IT業界と下請法 - その1IT業界と下請法 - その2の続き)

親事業者の禁止事項

親事業者の禁止事項には以下の11項目がある。なお、これらについては、下請事業者が了解していたとしても違法となる。

  1. 買いたたきの禁止

    類似品等の価格または市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

  2. 受領拒否の禁止

    注文した物品等の受領を拒むこと。

  3. 返品の禁止

    受け取った物を返品すること。

  4. 下請代金の減額の禁止

    あらかじめ定めた下請代金を減額すること。

  5. 下請代金の支払遅延の禁止

    下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。

  6. 割引困難な手形の交付の禁止

    一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。

  7. 購入・利用強制の禁止

    親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

  8. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止

    下請事業者から金銭や労務の提供等をさせること。

  9. 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止

    費用を負担せずに注文内容を変更し,または受領後にやり直しをさせること。

  10. 報復措置の禁止

    下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

  11. 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

    有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。

罰則

次の場合には、個人と法人の両方が50万円以下の罰金に処せられる。

  • 書面の交付義務違反
  • 書類の作成及び保存義務違反
  • 報告徴収に対する報告拒否・虚偽報告
  • 立入検査の拒否・妨害・忌避

2007/02/14

在留資格認定証明書不交付決定取消の顛末 - その2

在留資格認定証明書不交付決定取消の顛末 - その1からの続き)

中国の情報処理関連試験を実施しているのは信息産業部電子教育・考試中心というところである。IT告示には「信息産業部電子教育中心」とあるが、少しだけ名称が変わったようだ。

資格の名称や分類については計算機技術・軟件専門技術資格(レベル)試験紹介のページで概略が紹介されている。ここにある表をそのまま引用すれば次のとおりである(表中の太字は引用者)。


表1. 计算机技术与软件专业技术资格(水平)考试

专业类别、资格名称和级别对应表


计算机
软件

计算机
网络

计算机
应用技术

信息系统

信息服务

高级资格

信息系统项目管理师

系统分析师(原系统分析员)

系统架构设计师

中级资格

软件评测师

软件设计师

(原高级程序员)

网络工程师

多媒体应用设计师


嵌入式系统设计师

计算机辅助设计师

电子商务设计师

信息系统监理师


数据库系统工程师

信息系统管理工程师

信息技术

支持工程师

初级资格

程序员
(原初级程序员、程序员)

网络管理员

多媒体应用制作技术员
电子商务技术员

信息系统运行管理员

信息处理

技术员



日本語に訳すまでもなく次のことが分かる。
  • 「程序員」はコンピュータソフトウェア(計算機軟件)のカテゴリーに属する資格であること。
  • 各資格は高級・中級・初級にレベル分けされており、「程序員」は初級レベルに位置付けられていること。
  • 従前の「初級程序員」と「程序員」とが統合されて現在の「程序員」となっていること。

入管職員の「『資格級別』に『初級』とあるのでIT告示には該当しなかったように思う」という発言は、従前の「初級程序員」のことが念頭にあったのではないか。「初級程序員」の「初級」と資格レベルの「初級」とが混同されているとすれば、入管職員の発言も分からなくはない。

従前の資格区分がどのようにして現在の資格区分に統廃合されたのかは、このサイトからは伺い知るこことができない。しかし、いずれにしろ、今回の申請人が有しているのは「程序員」の資格である。「初級」云々は関係ない。「程序員」の資格級別はみな必然的に「初級」となるのだ。そして、「程序員」の資格を有している以上、IT告示に該当しないという解釈はありえない。

結局、このまま申請することにした。私が「程序員」の資格について調べたのは今回が始めてだが、それでも以上のようなことはそれほど手間をかけることなく把握できた。入管においても、審査の中できちんと確認してくれれば、この申請人は問題なくIT告示に該当すると判断されるはずだ。そう考えた。

書類を提出したのち、入管からは特に何の連絡もなかった。そして申請からちょうど1ヶ月後、結果通知が届いた。

(続く)


IT業界と下請法 - その2

IT業界と下請法 - その1の続き)

親事業者の義務

下請法の対象となった場合、親事業者には次の4つの義務が発生する。

  1. 書面の交付義務
  2. 支払期日を定める義務
  3. 類の作成・保存義務
  4. 遅延利息の支払義務

書面の交付義務

親事業者は発注に際して下記の具体的事項をすべて記した書面を直ちに下請事業者に交付しなければならない。書面交付は原則として発注のつど必要だが、継続的取引の場合はあらかじめ書面で通知すれば個々の発注に際して交付する書面への記載は不要となる。

  1. 親事業者及び下請事業者の名称(番号・記号等による記載も可)
  2. 製造または修理・情報成果物作成・役務提供を委託した日
  3. 下請事業者の給付の内容(下請事業者が作成・提供する委託の内容)
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は役務が提供される期日または期間)
  5. 下請事業者の給付を受領する場所
  6. 下請事業者の給付の内容について検査をする場合はその検査を完了する期日
  7. 下請代金の額(算定方法による記載も可)
  8. 下請代金の支払期日
  9. 手形を交付する場合はその手形の金額(支払比率でも可)と手形の満期
  10. 一括決済方式で支払う場合は金融機関名・貸付けまたは支払可能額・親事業者が下請代金債権相当額または下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
  11. 原材料等を有償支給する場合はその品名・数量・対価・引渡しの期日・決済期日・決済方法

  • 書面は紙媒体の代わりに電子メールなどの電磁的記録を使っても構わない。この場合、下請事業者の承諾が必要である。
  • 電話のみによる発注は義務違反となる。

支払期日を定める義務

親事業者は下請事業者との合意のもとで支払期日を定めなければならない。

  • 支払期日は、物品等を受領した日またはサービスの提供を受けた日から
    60日以内としなければならない。
  • 親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかは問わない。

書類の作成・保存義務

下請事業者に対して委託をした場合、親事業者は、下請代金の額などについて記した書類を作成し、2年間保存しなければならない。

具体的記載事項は次のとおり。

  1. 下請事業者の名称(番号・記号などによる記載も可)
  2. 製造または委託・修理・情報成果物作成・役務提供を委託した日
  3. 下請事業者の給付の内容
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は役務が提供される期日・期間)
  5. 下請事業者から受領した給付の内容及びその給付を受領した日(役務提供委託の場合は役務が提供された日・期間)
  6. 下請事業者の給付の内容について検査をした場合はその検査を完了した日・検査の結果・検査に合格しなかった給付の取扱い
  7. 下請事業者の給付の内容について変更又はやり直しをさせた場合はその内容及び理由
  8. 下請代金の額(算定方法による記載も可)
  9. 下請代金の支払期日
  10. 下請代金の額に変更があった場合は増減額及びその理由
  11. 支払った下請代金の額・支払った日・支払手段
  12. 下請代金の支払につき手形を交付した場合は手形の金額・手形を交付した日手形の満期
  13. 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付けまたは支払を受けることができることとした額と期間の始期、親事業者が下請代金債権相当額または下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
  14. 原材料等を有償支給した場合はその品名・数量・対価・引渡しの日・決済をした日・決済方法
  15. 下請代金の一部を支払いまたは原材料等の対価を控除した場合はその後の下請代金の残額
  16. 遅延利息を支払った場合は遅延利息の額および遅延利息を支払った日

  • 書面は紙媒体の代わりに電磁的記録を使っても構わない。

遅延利息の支払義務

親事業者は、下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対して遅延利息を支払わなければならない。

  • 遅延利息は、物品等を受領した日またはサービスの提供を受けた日から
    起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について
    支払わなければならない。
  • 利率は年14.6%である。

2007/02/13

IT業界と下請法 - その1

IT分野も下請法の適用を受けるので、備忘録代わりに下請法の概要を整理してみる。

下請法の目的

  • 下請取引の公正化
  • 下請事業者の利益保護

独占禁止法に比べて簡易な手続を規定し、迅速かつ効果的に下請事業者の保護を図ることを目的としている。

下請法の適用範囲

下請法の適用範囲は次の2つの面から定められる。

  1. 取引事業者の資本金(または出資金の総額)
  2. 取引の内容

取引の内容に関する適用範囲

IT分野で適用範囲となる取引内容は次のとおり。

  • プログラムの作成委託

    プログラム自体の作成のほか、ドキュメントの作成も含まれる。

  • 情報処理に関するサービス提供委託

    ここで言う「情報処理」とは、コンピュータを使って計算・検索などを行うことで、プログラム作成に該当しないもの。例えば計算事務処理や情報システムの運用などが該当する。

取引事業者の資本金(または出資金の総額)に関する適用範囲

親事業者と下請事業者の範囲は次のとおり。


親事業者 下請事業者
資本金3億円超

(法人)
―→ 資本金3億円以下

(法人または個人)
資本金1000万円3億円以下

(法人)
―→ 資本金1000万円以下

(法人または個人)

IT業界と下請法 - その2へ続く)


2007/02/08

もんたメソッド

巷では1年半前に流行した「もんたメソッド」に今ごろ興味を持った。そもそもは高橋メソッドというプレゼン技法から派生したもの。

2007/02/05

NHKとスーパーボウルと情報公開

スーパーボウルはコルツの勝利で幕を閉じた。どちらかというとベアーズを応援していたのだが、こういう結果になることは何となく分かっていたような気がする。正直いって試合としては特に面白かったというわけではないが、開始直後のリターンタッチダウンには大いに盛り上がった。まだプロボウルが残っているものの、9月までNFLの試合が見られないかと思うと少々寂しい。

ところで問題にしたいのはNHKの放送体制である。

ワクワクして8:00きっかりにチャンネルをBS1にすると、ゴルフの中継をやっている。あれ8:00からBSニュースで8:05からスーパーボウルを生中継するのではなかったかと思っていると、「BSニュースはゴルフ中継が終わり次第お送りします」という旨のテロップが表示されているではないか。

一瞬唖然とし、次の瞬間激怒した。一体何を考えているのか。ゴルフが終わるまでスーパーボウルを中継しないというのか。スーパーボウルは生中継のはずだ。キックオフの瞬間が見られなかったらどうしてくれるのか。放送権を獲得したからには責任を持って放送するのが使命ではないのか。NHKは余るほどチャンネルを持っているのに何故こんなことをするのか。そうでなくてもNHKは前日に3時間もの特番でスーパーボウル観戦ガイドを放送するなど、2/5の8:05から生中継するとさんざん宣伝していたではないか。

あまりのことに怒りをどうしたらよいのか分からずにいると、8:03にゴルフが終わり、3分遅れでBSニュースが始まった。どうやらスーパーボウルは8:08から放映されるようだった。しかしこのBSニュースも理解しがたい。8:05からスーパーボウルをやることはこの時間にチャンネルを合わせている者は誰でも知っている。NHK自身があれだけ宣伝していたのだから。その予定を崩してまで8:03から8:08までBSニュースを流す必要がどこにあるのだろう。今日この時間に5分間のニュースダイジェスト番組が放映されなかったとしても誰も何も困らない。8:05までゴルフを中継し、8:05からスーパーボウルをやればよいのだ。番組にスポンサーが付いているわけではないので、その程度の臨機応変な対応は造作ないはずである。いや、それともひょっとして実はスポンサーが付いていたのか。

3分遅れで始まった番組は結局スーパーボウル生中継に大きな支障をきたすことはなかった。キックオフには充分間に合ったし、コイントスにもビリー・ジョエルによる米国国家斉唱(とうか弾き語り?)にも間に合った。しかし私はNHKのやり方にどうしても納得することができなかったため、抗議の意味を込めて何らかの行動をとりたいと考えた。

私は一応行政書士であるし、情報公開法による開示請求など行政法に基づく対応は趣味でもある(?)ので、その線でいくことを思い付いた。すなわち、

  • 今回のゴルフの放映権を獲得するのに要した費用の額が分かる文書
  • スーパーボウルの放映権を獲得するのに要した費用の額が分かる文書
  • スーパーボウルの生中継開始予定時間に食い込んでもゴルフを
    優先させることに決めた経緯が分かる文書

この3文書を開示請求してみるというものである。これらが明らかになれば、NHKが一体何を考えて今回のようなやり方をとったのかが分かるとともに、今後同様の事例が起こるのを防ぐことにも役立つのではないかと考えたのだ。

さっそく開示請求の具体的な手続方法を調べた。すると、何ということか、NHKには情報公開の義務が法定されていなかった。

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」
(いわゆる情報公開法)にも「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」(いわゆる独立行政法人等情報公開法)にもNHKは該当しないのである。行政法マニア(?)としては恥ずかしいことだが、きょう始めて知った。しかし、独立行政法人に情報公開の義務があるのにNHKにないというのは理解しかねる。国立大学法人の情報公開よりNHKの情報公開の方がどう考えても重要だし必要だ。

しかし法定された制度がなければ仕方ないので、任意の請求が可能かどうかを調べたところ、
NHKが独自に定めた情報公開の制度があった。NHK自身が規定した任意の制度なので弱いといえば弱いが、これに基いて上記3点の情報を開示請求しようとした。

すると本日2回目の激怒に襲われた。上記3点はいずれも開示の対象とならないのである。

NHK情報公開規程(引用者注:リンク先はPDF文書)

(対象文書)
第3条 開示の求めの対象となる文書は、NHK役職員が業務上共用するものとして保有している文書(電磁的に記録されたものを含む。)とする。ただし、次に掲げるものについては、開示の求めの対象外とする。
 (1) 放送番組および放送番組の編集に関する情報を記録したもの(別表1)
 (2)、(3) 略


別表1

ア 放送番組を記録したテープ、ハードディスク、DVDその他の媒体

イ 放送番組の素材を記録したテープ、ハードディスク、DVDその他の媒体

ウ 個々の放送番組の企画、取材、収録、中継その他の制作業務を行う目的で作成しまたは取得した文書

エ 放送番組の編成または開発(以下「編成等」という。)を行う目的で作成しまたは取得した文書

オ 放送番組の全般または一分野について、内容、制作工程等を規律する目的で作成しまたは取得した文書

カ 放送番組の制作または編成等を円滑に行う目的で、連絡、協議等のために作成しまたは取得した文書

キ 放送番組の制作または編成等に従事する要員の配置または業務分担に関する事項を記載した文書

ク 放送番組の制作または編成等に使用する設備、機材、システム等の運用に関する事項を記載した文書

ケ 放送番組の制作または編成等の経費に関する事項を記載した文書

コ その他アからケまでに掲げる媒体または文書に記録された情報に準ずる情報を記録したもの

(太字は引用者)

これらを除外して一体全体何を開示請求しろというのか。「日本放送協会(以下「NHK」という。)は、(中略)視聴者からの受信料を財源とすることにかんがみ、視聴者に対する情報の公開にいっそう取り組み、その支持と信頼をより確かなものにしていく。」(NHK情報公開基準)の結果がこれだ。「みなさまのNHK」などというのは100%嘘っぱちだと確信した。


2007/01/30

在留資格認定証明書不交付決定取消の顛末 - その1

いったん不交付の決定がなされた在留資格認定証明書交付申請が1ヶ月半後に取り消され、遡って交付となった。その顛末を備忘録代わりに書いておきたい。

申請人は中国の会社員で、日本のソフトウェア会社からシステムエンジニア・プログラマとして採用の内定をもらった。この会社からの依頼により「技術」の在留資格認定証明書交付申請を申請取次したわけである。

在留資格「技術」が認められるために重要な条件が2つある。

  1. 大卒の学歴または10年以上の実務経験があること(大学は短大でも可)。
  2. 学校または実務経験によって履修した技術・知識が、就職先で従事しようとする業務に必要であること。

ただし情報処理技術者については例外規定がある。一定の情報処理技術に関する試験合格者または有資格者は、上記2つに該当していなくても構わないのだ。この試験・資格を定めているのが通称「IT告示」である。

「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術及び特定活動の在留資格に係る基準の特例を定める件」通称「IT告示」

このIT告示の第6号に中国の試験がある。

六 中国信息産業部電子教育中心が実施する試験のうち次に掲げるもの
 イ 系統分析員(システム・アナリスト)
 ロ 高級程序員(ソフトウエア・エンジニア)
 ハ 程序員(プログラマ)

今回の申請人はこの「程序員」の試験に合格していた。


この申請人がIT告示に該当することは明らかだと思われたが、念のため事前に入管へ確認することにした。すると、この資格証書を見た職員は、確かに程序員だが「資格級別」に「初級」とあるのでIT告示には該当しなかったように思う、確かめてみないとはっりきしたことは言えないが、という意味の返答をした。

「程序員」であっても該当しない場合があるとはIT告示のどこにも書かれていないのに、入管職員はなぜそのようなことを言うのか。調べてみると思い当たる点が見つかった。

在留資格認定証明書不交付決定取消の顛末 - その2へ続く)


2007/01/27

偽装請負に対する取組 厚生労働省

偽装請負に対する当面の取組について

2006年9月4日付けで労働基準局長・職業安全局長から都道府県労働局長あてに発せられた通達。


IT分野の請負適正化のための自主点検表 東京労働局

情報サービス業に於ける請負の適正化のための自主点検表

派遣と請負により行われる事業の区分基準(昭和61年労働省告示第37号)及び職業安定法施行規則第4条を踏まえて、請負(業務委託を含む)が適正に行われているかのチェックポイント(目安)を示したものです。適正な請負のための大切な要件は「★印」の2つの項目です。それを満たすためにさらに「1~4」の4つの項目があります。現場の実態に照らし合わせて点検をしてみましょう!

(対象業務:ソフトウェア・システム設計・開発、システム運用管理等)


電子モールの独占禁止法的問題 - 公取委の報告書

公正取引委員会の報道発表資料「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」(PDF)より。

  • 電子商店街における取引は運営事業者のうち上位3社に集中
  • 上位3社の中には出店事業者との取引において優位に立つ場合がある事業者がある。

概要

  • 取引規模(=電子商店街内で流通する商品等の総額)から見ると,楽天,ヤフー,DeNAの3社が上位の運営事業者であり(以下「上位3社」という。),上位3社だけで電子商店街全体の市場規模の9割超を占める。

  • 上位3社と出店事業者の事業規模には格差があり,また,上位3社に取引が 集中している状況にあるところ,出店事業者は一般的に電子商店街における 取引への依存度が高く,取引先である運営事業者を変更することが困難な場合があり,上位3社の中には,出店事業者に対する取引上の立場において優位に立つ場合がある事業者がある。

具体的には以下のような点が独占禁止法上問題となりうると指摘されている。

  • 退店後のダイレクトメール送付等の営業活動の制限は運営事業者による拘束条件付取引となりうる。

  • 手数料率の一方的変更は優越的地位の濫用等につながるおそれがある。

  • 過大なポイント原資の賦課は優越的地位の濫用等につながるおそれがある。

  • 運営事業者によるカード決済代行業務の利用義務付けは優越的地位の濫用等につながるおそれがある。

  • 定価販売の遵守や値引販売の禁止は再販売価格の拘束となりうる。

  • 仕入先事業者によるネット販売の禁止や高い仕入値の設定は拘束条件付取引や差別対価となりうる。

公取委下請取引改善協力委員会議で出た情報サービス分野に関する意見

公正取引委員会の報道発表資料「下請取引改善協力委員会議で出された主な意見について」(PDF)より。

 公正取引委員会では,下請法の的確な運用に資するため,昭和40年度以降,各地域の下請取引の実情に明るい民間有識者等に下請取引改善協力委員を委嘱している。平成18年度における下請取引改善協力委員は153名である。

 今般,平成18年11月1日から11月30日の間,地域ブロックごとに下請取引改善協力委員会議を開催した(開催状況は別紙のとおり。)。同会議において,各地域の下請取引改善協力委員から下請取引の現状等に関して出された主な意見等の概要は以下のとおりである。

IT分野等に関する意見は以下のとおり。

  • 情報成果物の作成委託では,物品の製造のように客観的な数値等で発注内容を判断することができず,人間の主観的な部分で判断しなければならない要素が多いため,完成した成果物の受領を巡って親事業者と下請事業者の間でトラブルとなりやすい。

  • 情報成果物作成委託分野は,発注内容を主観的に判断せざるを得ない場合があるため,書面交付の徹底とともに,知的財産権の帰属等も含めて,発注内容の明確化を図るよう指導することが重要である。

  • 情報サービス分野では,コーディング作業を受注した下請事業者が,親事業者の社内で作業することが多く,請負と人材派遣の区別が困難な場合があるため,親事業者は下請法及び労働者派遣法に関する理解を深める必要がある。

「情報成果物の作成委託では,物品の製造のように客観的な数値等で発注内容を判断することができず,人間の主観的な部分で判断しなければならない要素が多い」という点については、確かにそのような現実があると思う。しかし、だからこそ可能な限り指標を数値化(見える化?)する必要性があるのではないだろうか。

業種を問わない全般的な意見は以下のとおり。

  • 景気の回復が戦後最長を記録したといわれているが,それは大企業を中心としたものである。中小企業が多い下請事業者は,依然として親事業者からの厳しいコスト削減要求を受けており,景気回復の実感は少ない。

  • 大企業を中心とした景気回復の影響で,一部の下請事業者への発注は活発に行われている。しかし,下請事業者の受注量が増えたとしても,コストが増 加しているにもかかわらず下請代金は据え置かれているため,利益は思ったほど出ておらず,下請事業者の多くは「利益なき繁忙」といった状況になっている。

  • 違反事件の勧告・公表措置の効果はかなり大きい。違反事実を公表されることは,企業のイメージ低下につながるため,親事業者は下請法遵守を積極的に行っているように思われる。

  • 大企業の下請法認知度は高まっているが,中小企業の下請法に関する認識は依然低いことから,今後の下請法の普及・啓発は中小企業に対しても広く行っていく必要がある。

  • 親事業者の法務担当者は下請法を熟知しているが,現場の発注担当者の下請法に関する理解度はまだまだ不足している。講習会の機会を増やしたりするなど,積極的な普及・啓発活動が重要である。

  • 親事業者に対する書面調査は,違反事件の探知のために行っていると思うが,下請法の普及・啓発の手段としても有効なのではないか。

  • 下請事業者の中には,公正取引委員会から送られてくる書面調査に記入した情報が何らかの形で漏れることを警戒するあまり,事実を回答せずに当たり 障りのない回答をしている者もいるのではないか。違反か違反でないかだけを判定するのではなく,下請事業者が取引上困っているとのサインを出しやすくする ような工夫が必要である。

  • 親事業者に対する調査は,書面のみで行うよりもできる限り直接出向いて行う方が効果的ではないか。


「電子商取引等に関する準則改訂案」に対する意見公募

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595206035&OBJCD=&GROUP

意見・情報受付開始日:2006年12月25日

意見・情報受付締切日:2007年1月25日

メールは証拠になるか

電子メールは裁判で証拠になるかについて、南山大学町村泰貴教授がITmediaで解説している。

http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0612/22/news006.html

概略は次のようになる。

  • PCメール・携帯メールも証拠となりうる。
  • 当事者間でメールの真偽性に争いがなければ証拠として扱われる。
  • 真偽性に争いがある場合でも電子署名がなされていれば本物と推定される。
  • 電子署名がない場合はデータに含まれるさまざまな情報から判断する。

「さまざまな情報から判断する」作業がデジタル・フォレンジックということになろうか。


特許庁へのオンライン申請で使える電子証明書

特許・商標等を特許庁へオンライン申請する際に使える電子証明書は以下の認証局から発行されたものとされている。

法人の場合

  • 電子認証登記所(商業登記認証局)

個人事業主(弁理士含む)の場合

  • 日本商工会議所 ビジネス認証サービスタイプ1に係る認証局(一般行政手続用電子証明書(タイプ1-E)に限る)
個人(弁理士含む)の場合
  • 日本認証サービス株式会社 AccreditedSignパブリックサービス2に係る認証局
  • セコムトラストシステムズ株式会社 セコムパスポートfor G-IDに係る認証局
  • (株)中電シーティーアイ CTI電子入札・申請届出対応電子認証サービスに係る認証局

インターネット出願ソフトで利用可能な電子証明書について

公的個人認証サービスの電子証明書がなぜ使えないのか?


2007/01/26

総務省が個人情報漏洩でNTTドコモに厳重注意

個人情報の漏えい事案に関する株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモに対する措置(総務省報道資料)

2006年9月に起った3万8483件の個人情報漏洩に関して総務省が文書による厳重注意を行った。

事件の概要は、NTTドコモの業務委託先の社員が事務所移転準備作業中に事務所備品購入のためショッピングセンターの駐車場に車を駐車していたところ、車から離れている間に車上あらしに遭い、個人情報を記録したUSBフラッシュメモリーの入ったバッグが盗難に遭い、個人情報(氏名・携帯電話番号)3万8483件が漏洩したというものである。


NTTドコモが総務省に提出した報告によると発生原因は次の3点が挙げられている。
  1. 委託先従業員による個人情報の無許可複製
  2. 委託先従業員の不十分な意識
  3. 指導監督の不徹底
そして主な再発防止策としては次の3点が挙げられている。
  1. 個人情報管理状態の点検
  2. 教育研修
  3. 抜き打ち調査
この再発防止策で本当に再発が防げるのだろうか。例えば、業務委託時に個人情報の取扱に関する契約を交しておき、被害発生時には損害を賠償してもらうことを明記するなどの方法は考えられないだろうか。


京都銀行ダイレクトバンキングで電子証明書期限切れ

京都銀行ダイレクトバンキングにログインしようとしたらこのような画面が表示された(Firefox 2.0.0.1)。



電子証明書の有効期限切れである。IE7 でアクセスすると次のようになった。


「セキュリティ証明書の問題によって、詐欺や、お使いのコンピュータからサーバに送信される情報を盗み取る意図が示唆されている場合があります。」や「このページを閉じて、このWebサイトの閲覧を続行しないことを推奨します。」とあり、非常に強い表現で警告されている。

詳細についてヘルプを参照すると以下のように解説されていた。

このエラーは、現在の日付が証明書の有効期間より前または後のときに発生します。Web サイトは、証明書を最新の状態にするために、証明機関で証明書を更新する必要があります。有効期限の切れた証明書は、セキュリティの問題を発生させる可能性があります。証明書を発行した証明機関は、証明書の有効期限が切れた後は、証明書が不正に使用されないことを保証していません。

かなり安全性を意識した作りになっており、妥当なことだと思う。問題なのはサービス提供者側(今回の場合は京都銀行)の意識だ。


問い合わせ先の京都銀行ダイレクトバンキングセンターに電話して聞いてみると、今朝から障害が発生しておりお客様には迷惑をかけているが、セキュリティ面の問題はないので「はい」を押して先へ進んでくれとの回答である。

Firefox2 でも IE7 でも「はい」というボタンは出てこないのでこの回答には少々戸惑ったが、要は警告を無視して先へ進めという意味であろう。それにしてもこの回答はひどい。前掲の IE7の画面を見ると警告を無視してよいとは到底思えないが、これに対して「セキュリティ面の問題はありませんので」と言い切ってしまって良いものだろうか。

食い下がって詳しい回答を求めようとしたが、「セキュリティ面の問題はありませんので」を何度も繰り返す若い(と思われる)女性がかわいそうになり、止めてしまった。そのように答えろと上司から言われているのだろうが、もう少し何とかならないものか。

参考:

高木浩光@自宅の日記 - 広島市曰く「警告は出ますがセキュリティ自体には問題ない」, 高知県情報企画課曰く「とくにおかしいと思わない」, 簡単な結論