2007/01/27

公取委下請取引改善協力委員会議で出た情報サービス分野に関する意見

公正取引委員会の報道発表資料「下請取引改善協力委員会議で出された主な意見について」(PDF)より。

 公正取引委員会では,下請法の的確な運用に資するため,昭和40年度以降,各地域の下請取引の実情に明るい民間有識者等に下請取引改善協力委員を委嘱している。平成18年度における下請取引改善協力委員は153名である。

 今般,平成18年11月1日から11月30日の間,地域ブロックごとに下請取引改善協力委員会議を開催した(開催状況は別紙のとおり。)。同会議において,各地域の下請取引改善協力委員から下請取引の現状等に関して出された主な意見等の概要は以下のとおりである。

IT分野等に関する意見は以下のとおり。

  • 情報成果物の作成委託では,物品の製造のように客観的な数値等で発注内容を判断することができず,人間の主観的な部分で判断しなければならない要素が多いため,完成した成果物の受領を巡って親事業者と下請事業者の間でトラブルとなりやすい。

  • 情報成果物作成委託分野は,発注内容を主観的に判断せざるを得ない場合があるため,書面交付の徹底とともに,知的財産権の帰属等も含めて,発注内容の明確化を図るよう指導することが重要である。

  • 情報サービス分野では,コーディング作業を受注した下請事業者が,親事業者の社内で作業することが多く,請負と人材派遣の区別が困難な場合があるため,親事業者は下請法及び労働者派遣法に関する理解を深める必要がある。

「情報成果物の作成委託では,物品の製造のように客観的な数値等で発注内容を判断することができず,人間の主観的な部分で判断しなければならない要素が多い」という点については、確かにそのような現実があると思う。しかし、だからこそ可能な限り指標を数値化(見える化?)する必要性があるのではないだろうか。

業種を問わない全般的な意見は以下のとおり。

  • 景気の回復が戦後最長を記録したといわれているが,それは大企業を中心としたものである。中小企業が多い下請事業者は,依然として親事業者からの厳しいコスト削減要求を受けており,景気回復の実感は少ない。

  • 大企業を中心とした景気回復の影響で,一部の下請事業者への発注は活発に行われている。しかし,下請事業者の受注量が増えたとしても,コストが増 加しているにもかかわらず下請代金は据え置かれているため,利益は思ったほど出ておらず,下請事業者の多くは「利益なき繁忙」といった状況になっている。

  • 違反事件の勧告・公表措置の効果はかなり大きい。違反事実を公表されることは,企業のイメージ低下につながるため,親事業者は下請法遵守を積極的に行っているように思われる。

  • 大企業の下請法認知度は高まっているが,中小企業の下請法に関する認識は依然低いことから,今後の下請法の普及・啓発は中小企業に対しても広く行っていく必要がある。

  • 親事業者の法務担当者は下請法を熟知しているが,現場の発注担当者の下請法に関する理解度はまだまだ不足している。講習会の機会を増やしたりするなど,積極的な普及・啓発活動が重要である。

  • 親事業者に対する書面調査は,違反事件の探知のために行っていると思うが,下請法の普及・啓発の手段としても有効なのではないか。

  • 下請事業者の中には,公正取引委員会から送られてくる書面調査に記入した情報が何らかの形で漏れることを警戒するあまり,事実を回答せずに当たり 障りのない回答をしている者もいるのではないか。違反か違反でないかだけを判定するのではなく,下請事業者が取引上困っているとのサインを出しやすくする ような工夫が必要である。

  • 親事業者に対する調査は,書面のみで行うよりもできる限り直接出向いて行う方が効果的ではないか。