(IT業界と下請法 - その1の続き)
親事業者の義務
下請法の対象となった場合、親事業者には次の4つの義務が発生する。
- 書面の交付義務
- 支払期日を定める義務
- 類の作成・保存義務
- 遅延利息の支払義務
書面の交付義務
親事業者は発注に際して下記の具体的事項をすべて記した書面を直ちに下請事業者に交付しなければならない。書面交付は原則として発注のつど必要だが、継続的取引の場合はあらかじめ書面で通知すれば個々の発注に際して交付する書面への記載は不要となる。
- 親事業者及び下請事業者の名称(番号・記号等による記載も可)
- 製造または修理・情報成果物作成・役務提供を委託した日
- 下請事業者の給付の内容(下請事業者が作成・提供する委託の内容)
- 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は役務が提供される期日または期間)
- 下請事業者の給付を受領する場所
- 下請事業者の給付の内容について検査をする場合はその検査を完了する期日
- 下請代金の額(算定方法による記載も可)
- 下請代金の支払期日
- 手形を交付する場合はその手形の金額(支払比率でも可)と手形の満期
- 一括決済方式で支払う場合は金融機関名・貸付けまたは支払可能額・親事業者が下請代金債権相当額または下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
- 原材料等を有償支給する場合はその品名・数量・対価・引渡しの期日・決済期日・決済方法
- 書面は紙媒体の代わりに電子メールなどの電磁的記録を使っても構わない。この場合、下請事業者の承諾が必要である。
- 電話のみによる発注は義務違反となる。
支払期日を定める義務
親事業者は下請事業者との合意のもとで支払期日を定めなければならない。
- 支払期日は、物品等を受領した日またはサービスの提供を受けた日から
60日以内としなければならない。 - 親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかは問わない。
書類の作成・保存義務
下請事業者に対して委託をした場合、親事業者は、下請代金の額などについて記した書類を作成し、2年間保存しなければならない。
具体的記載事項は次のとおり。
- 下請事業者の名称(番号・記号などによる記載も可)
- 製造または委託・修理・情報成果物作成・役務提供を委託した日
- 下請事業者の給付の内容
- 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は役務が提供される期日・期間)
- 下請事業者から受領した給付の内容及びその給付を受領した日(役務提供委託の場合は役務が提供された日・期間)
- 下請事業者の給付の内容について検査をした場合はその検査を完了した日・検査の結果・検査に合格しなかった給付の取扱い
- 下請事業者の給付の内容について変更又はやり直しをさせた場合はその内容及び理由
- 下請代金の額(算定方法による記載も可)
- 下請代金の支払期日
- 下請代金の額に変更があった場合は増減額及びその理由
- 支払った下請代金の額・支払った日・支払手段
- 下請代金の支払につき手形を交付した場合は手形の金額・手形を交付した日手形の満期
- 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付けまたは支払を受けることができることとした額と期間の始期、親事業者が下請代金債権相当額または下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
- 原材料等を有償支給した場合はその品名・数量・対価・引渡しの日・決済をした日・決済方法
- 下請代金の一部を支払いまたは原材料等の対価を控除した場合はその後の下請代金の残額
- 遅延利息を支払った場合は遅延利息の額および遅延利息を支払った日
- 書面は紙媒体の代わりに電磁的記録を使っても構わない。
遅延利息の支払義務
親事業者は、下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対して遅延利息を支払わなければならない。
- 遅延利息は、物品等を受領した日またはサービスの提供を受けた日から
起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について
支払わなければならない。 - 利率は年14.6%である。