2007/02/05

NHKとスーパーボウルと情報公開

スーパーボウルはコルツの勝利で幕を閉じた。どちらかというとベアーズを応援していたのだが、こういう結果になることは何となく分かっていたような気がする。正直いって試合としては特に面白かったというわけではないが、開始直後のリターンタッチダウンには大いに盛り上がった。まだプロボウルが残っているものの、9月までNFLの試合が見られないかと思うと少々寂しい。

ところで問題にしたいのはNHKの放送体制である。

ワクワクして8:00きっかりにチャンネルをBS1にすると、ゴルフの中継をやっている。あれ8:00からBSニュースで8:05からスーパーボウルを生中継するのではなかったかと思っていると、「BSニュースはゴルフ中継が終わり次第お送りします」という旨のテロップが表示されているではないか。

一瞬唖然とし、次の瞬間激怒した。一体何を考えているのか。ゴルフが終わるまでスーパーボウルを中継しないというのか。スーパーボウルは生中継のはずだ。キックオフの瞬間が見られなかったらどうしてくれるのか。放送権を獲得したからには責任を持って放送するのが使命ではないのか。NHKは余るほどチャンネルを持っているのに何故こんなことをするのか。そうでなくてもNHKは前日に3時間もの特番でスーパーボウル観戦ガイドを放送するなど、2/5の8:05から生中継するとさんざん宣伝していたではないか。

あまりのことに怒りをどうしたらよいのか分からずにいると、8:03にゴルフが終わり、3分遅れでBSニュースが始まった。どうやらスーパーボウルは8:08から放映されるようだった。しかしこのBSニュースも理解しがたい。8:05からスーパーボウルをやることはこの時間にチャンネルを合わせている者は誰でも知っている。NHK自身があれだけ宣伝していたのだから。その予定を崩してまで8:03から8:08までBSニュースを流す必要がどこにあるのだろう。今日この時間に5分間のニュースダイジェスト番組が放映されなかったとしても誰も何も困らない。8:05までゴルフを中継し、8:05からスーパーボウルをやればよいのだ。番組にスポンサーが付いているわけではないので、その程度の臨機応変な対応は造作ないはずである。いや、それともひょっとして実はスポンサーが付いていたのか。

3分遅れで始まった番組は結局スーパーボウル生中継に大きな支障をきたすことはなかった。キックオフには充分間に合ったし、コイントスにもビリー・ジョエルによる米国国家斉唱(とうか弾き語り?)にも間に合った。しかし私はNHKのやり方にどうしても納得することができなかったため、抗議の意味を込めて何らかの行動をとりたいと考えた。

私は一応行政書士であるし、情報公開法による開示請求など行政法に基づく対応は趣味でもある(?)ので、その線でいくことを思い付いた。すなわち、

  • 今回のゴルフの放映権を獲得するのに要した費用の額が分かる文書
  • スーパーボウルの放映権を獲得するのに要した費用の額が分かる文書
  • スーパーボウルの生中継開始予定時間に食い込んでもゴルフを
    優先させることに決めた経緯が分かる文書

この3文書を開示請求してみるというものである。これらが明らかになれば、NHKが一体何を考えて今回のようなやり方をとったのかが分かるとともに、今後同様の事例が起こるのを防ぐことにも役立つのではないかと考えたのだ。

さっそく開示請求の具体的な手続方法を調べた。すると、何ということか、NHKには情報公開の義務が法定されていなかった。

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」
(いわゆる情報公開法)にも「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」(いわゆる独立行政法人等情報公開法)にもNHKは該当しないのである。行政法マニア(?)としては恥ずかしいことだが、きょう始めて知った。しかし、独立行政法人に情報公開の義務があるのにNHKにないというのは理解しかねる。国立大学法人の情報公開よりNHKの情報公開の方がどう考えても重要だし必要だ。

しかし法定された制度がなければ仕方ないので、任意の請求が可能かどうかを調べたところ、
NHKが独自に定めた情報公開の制度があった。NHK自身が規定した任意の制度なので弱いといえば弱いが、これに基いて上記3点の情報を開示請求しようとした。

すると本日2回目の激怒に襲われた。上記3点はいずれも開示の対象とならないのである。

NHK情報公開規程(引用者注:リンク先はPDF文書)

(対象文書)
第3条 開示の求めの対象となる文書は、NHK役職員が業務上共用するものとして保有している文書(電磁的に記録されたものを含む。)とする。ただし、次に掲げるものについては、開示の求めの対象外とする。
 (1) 放送番組および放送番組の編集に関する情報を記録したもの(別表1)
 (2)、(3) 略


別表1

ア 放送番組を記録したテープ、ハードディスク、DVDその他の媒体

イ 放送番組の素材を記録したテープ、ハードディスク、DVDその他の媒体

ウ 個々の放送番組の企画、取材、収録、中継その他の制作業務を行う目的で作成しまたは取得した文書

エ 放送番組の編成または開発(以下「編成等」という。)を行う目的で作成しまたは取得した文書

オ 放送番組の全般または一分野について、内容、制作工程等を規律する目的で作成しまたは取得した文書

カ 放送番組の制作または編成等を円滑に行う目的で、連絡、協議等のために作成しまたは取得した文書

キ 放送番組の制作または編成等に従事する要員の配置または業務分担に関する事項を記載した文書

ク 放送番組の制作または編成等に使用する設備、機材、システム等の運用に関する事項を記載した文書

ケ 放送番組の制作または編成等の経費に関する事項を記載した文書

コ その他アからケまでに掲げる媒体または文書に記録された情報に準ずる情報を記録したもの

(太字は引用者)

これらを除外して一体全体何を開示請求しろというのか。「日本放送協会(以下「NHK」という。)は、(中略)視聴者からの受信料を財源とすることにかんがみ、視聴者に対する情報の公開にいっそう取り組み、その支持と信頼をより確かなものにしていく。」(NHK情報公開基準)の結果がこれだ。「みなさまのNHK」などというのは100%嘘っぱちだと確信した。